新潟市財産経営推進計画の施設再編案「学校教育施設をどう考えるか?」

先日の新潟市議会9月定例会の一般質問で、新潟市財産経営推進計画の中で「学校教育施設をどう考えるか?」というテーマでも質問をしました。

新潟市財産経営推進計画が策定されたのが、平成27年度。その後、施設の統廃合を契機とした地域別実行計画が潟東、葛塚、曽野木、坂井輪地域の4地域で策定されました。背景には、新潟市内の一人当たり公共施設の面積が他の地域より大きく、今後の維持改修費用を捻出することができないとの問題意識があります。

各中学校区単位の地域で地域別実行計画を策定し、施設の再編を進めることとしましたが、総論賛成各論反対になりやすく、地域合意を得るためのワークショップを丁寧に行いながら、この間施策が実行されてきました。ワーキショップには幅広い層の地元住民が参加し、ファシリテーターが入り、各地域3回ほどの議論を重ね、再編案を策定してきました。

しかし、新潟市内には全部で約50の中学校区があり、このペースでは全ての地域の計画を策定するのに多くの時間を費やしてしまうことから、施設別の統廃合の方針を策定し、行政が再編案のパターンを住民に提示し、地域別の公共施設再編の実行計画をつくるというのが、現在新潟市が取り組んでいることです。

施設種類ごとに「存続」「条件付き存続」「廃止」などの方針を決めるための基準として、(1)定量的な基準をつくること、(2)地域事情などを考慮した訂正的な基準をつくることなどの枠組みを議論するため、現在有識者会議が開催されています。

私も先日、有識者会議を傍聴させていただきました。私が特に感じたポイントは、「学校教育施設を他の公共施設と同様にコスト評価することが妥当か」という点です。

今回のコスト評価として(1)利用者の人数推移(2)収入―支出(3)投資額に対しどの程度の利用があるか(4)維持管理運営コストに対してどの程度利用があるかの、の4つの指標が提示されています。4つのうち2つが水準以下かどうかが「存続」か「条件つき存続」の判断基準になっています。
私が疑問に感じた点は、小中学校などの学校教育施設をこの基準で測ることが適切かどうかという点です。例えば、「収入―支出」は指標の一つですが、学校教育施設は収入はほとんどありません。一方、人件費としては教員への給与等が該当しますが、他の公共施設よりも高くなります。また、教育への支出は将来的な税収として返ってくるため、現時点での支出を持って、施設の広さが妥当なのか判断することは困難です。

 

実際、学校教育施設は収入がないので、市が提示した施設種類別収支では24種類の中で一番大きな約49億円の大幅なマイナスとなっています。市内の公共施設面積のうち、約4割が学校施設ということもあり、学校施設の適正規模化を求める流れが強くなりそうなことに、不安を覚えます。

実際に、事務局が策定した「施設種類ごとの再編の考え方」には、小中学校は「適正規模の考え方に基づき小規模校は集約化。」との記載があります。

 

一方で、市内106校の小学校のうち適正規模以下の学校は47校(44%)となっており、地域の合意が得られず小規模校のままを選択している学校が多いのが実態です。地域の合意を得ずに、財政的な側面から学校施設の再編を進めることは、地域の声に耳を傾けないことになってしまい、対応には慎重かつ丁寧さが求められます。

加えて、コロナ渦を受け少人数学級への要請が強まるなど、学校をめぐる環境は変化しています。また、小規模特認校制度の活用など、小規模ならではの特色ある学校づくりを進めることで、多様な人材を育てることにも評価が高まっており、昨年12月議会で私もテーマに取り上げましたが、新潟市でも「要望があれば検討する」という段階にもきています。そういった中で、適正規模を数字だけで判断すべきではないと主張しました。

まず、新潟市の教育のあり方、学校配置のあり方を再度議論した上で、学校の集約化をどうするかについて再編案に反映させるべきです。この点については議論しましたが、あくまで市が令和3年中に策定する再編案は「案」であるとのことで、その後の地域住民との議論で決定するとの答弁でした。

「お金がないから学校を集約化する」との議論は、新潟市の将来にマイナスの結果をもたらします。そういったことがないよう、投資すべき分野と抑えるべき分野とのバランスをしっかりとりながら、議論が進むよう、今後も提言して参ります。